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さて、私がこうして哲学だとか芸術だとか、こういう人間に興味の目を向けたのはいつからだったかな。とふと思ったのでちょっと書いて見ようと思う。IMERUATのBlack Ocean 聞いてたら急に文章を書きたくなってしまって、私にとっての創作意欲って文章なのかな。

 はっきり覚えている私のはじめての哲学的問いは小学三年生の時、英会話を習い始めてすぐのことだった。<It is a dog.>この文に私は吐き気を覚えた。いや、それは誇張かもしれないが、ただ本当に気持ちが悪くなって軽い頭痛のようなものを感じたのは確かだ。彼(私)は田舎の生まれではないが、幼い頃からかなり強く生き物に興味を持っていたらしい。生き物、とは昆虫、鳥、両生類、魚……にとどまらず植物、キノコ類も含め、そして彼はいつの頃からかこの並びの中に人間を同列に意識していたようだ。
 そしてIt is a dog.と出会った。She is a girl.なのになぜ犬はIt? 全く理解できず先生にそれを質問し、困らせた。私はこの時「何故人間は自分ばっかり特別視するのか?」「生き物ならみんな同等だろう」という想いを初めて明晰に抱いたのだ。以後、私はむしろ人間を嫌いになったように思われる。ちょうど地球温暖化に関しての報道も過熱し、また核エネルギーの恐ろしさを自由研究でまとめたその年に9.11テロが起きた。そういう人間の愚かな面を印象付ける出来事が私を囲い、そうさせたのだろう。同様の理由で私は宗教も嫌った。身勝手で、ありもしない神を信じ、人間を特別高等なものとして扱う。高校一年のある瞬間まで、私は人間も動物も物も等しくみることができると感じていた理数系の分野に非常に魅かれていた。
 “ある瞬間”は突然訪れた。小学生からの友人で、私と同じく部活動に所属していなかったのでいつも一緒に帰っていたAが、ある日突然「明日昼飯を一緒に食べよう」とメールをしてきた。私は友人がいないわけではないが、あまり一緒に遊ぶことはなかったので、昼飯をどこか外で一緒に食べるということが初めてで、いささか興奮した。約束の時間にその場所へ行くと、Aはすでに先に付いていて、また私の知らない人間が隣に座っているのが分かった。年上という印象を受けた。私は自称人見知り――自称というのは他人からは人見知りと言われないため――で、また3人の集まりがとても苦手だったので、正直少し残念に思い、そして幾らか緊張した。奥まったところにある小さい机を私が壁側、Aともう一人は非壁側という構図で座った。
 最初はなんてことのない話しをしていたが、私は相手が何か別の狙いがあるのだろうと、すぐに感じ始めていた。理由は定かではない。ただ相手の特にAが連れて来たやつが不自然だった。よくある会話の途切れ、ハハハという愛想笑い、沈黙。Aは突然、しかしそこしかないというタイミングで口を開いた。
 「ブッポー、って知ってる?」
 「いや」
 聞きなれない言葉だったが、私はすぐにそれが宗教だと直感した。Aは小学生のころから、修学旅行などで突然消えることがあって、その時は決まって寺やら何やらの施設を訪れる時であった。そのことが突然、頭の中に湧きあがってハッとしたのだ。Aは何か言いながら本を出して私に見せた。やはり宗教だった(一応検索に引っ掛からないよう伏せるが日蓮宗系のブッポーである)。
 私は「しめた」と思った。そういう思想上の議論は滅多にできるものでなかったし、その頃の私は何かを信仰している人間なんて弱いやつだと思っていたから、あわよくば打ち負かしてやろうと思ったのだ。とにかく興味津津だったので私はいろいろなことを質問した。納得いかないことがあれば、とりあえず理論を理解できるまで、突き詰めた。次第に彼らが冗談ではなく本気でその仏に帰依しており、どうやら私に勝ち目がないことを悟った。そもそも彼は努力家だという印象が私にはあった。話の詳細はもうあまり覚えていない。ただAが「自分が高校に合格したのもブッポーのおかげ」と宣言したことは、未だにその表情、声の調子まで思い出せる。人間はこんなに強く何かを信じることができるのか。こういう関心が全面に出てくると、もう話はどうでもよくなってきて、それまでの自分の人間嫌悪を思いなおし、純粋に人間に興味を持とうと考えた。
 多分この瞬間がなければ私は哲学科には入っていなかった。そういう意味でブッポーは私を間接的に救ったのかもしれない――それが救いなのかは、まだ分からないし、また私はこのブッポー自体を信仰することはなかった。私はこのことをきっかけにかなり露骨に宗教学の本を読んだりするようになり、当然親に勧誘を受けたことを話していたので、母親に何か宗教にはまってしまったのではないかと心配された。母親は親戚に自分の推測を言いふらしたので、同じような心配を少ない親戚にもされた。逆に父はいたって冷静だった。もともと大学で歴史を専攻していたからかもしれない。もっともこの心配も私が大学に入る頃にはすっかりなくなっていたようだ。私は“変わった子”だったから。
 変わった子は、4時間に及ぶ宗教勧誘を終えても元気で、とりあえずその宗教の本をもらうことにした。それが、そろそろ退屈してきていたこの状況を終わらせるのに手っ取り早いと思ったからだ――そして案の定話はとりあえずおしまいになった。Aの仲間とはそこで別れた――以来二度と会っていない。私はAをそのまま家に呼び、いつも通りゲームをして彼と別れた。次の日からもいつも通り一緒に下校した。宗教の話はあえてはしなかったが必然性があればするつもりではあった。結局そのあと、一度だけAの家に行った時再び勧誘を受けたが、私は相変わらずで、それ以来もうAの方から宗教の話をすることはなくなった。後で他の友人に聞けばAから勧誘を受けた人は数多くいたようだった。
 「お前、よく普通に付き合っていられるな」
 信仰の自由は法律で認められているし、信仰は私にとっては有り得ないことだが、彼にとってはそれが必然なのだから、彼に冷たくする必要はないと思っていた。
 今や私は携帯電話を一度紛失したせいで、彼と交信する手段をなくしてしまった。気まずいだろうから同窓会にも来ないだろうし、もう会うこともないかもしれない。ただ私と直接会った人間で、いまのところ一番大きい影響を私に与えた人間は彼なのだ。私はAに感謝しすらしている。
 こうした私の体験は奇異に映るかもしれない。でもそれはあなたの見え方でしかない。物事は複雑だから、あなたも実はあなたが思ってもみない何かから、強い影響を受けているかもしれない。またあなたは自分でも気がつかない間に誰かに強い影響を与えているかもしれない。ひょっとしたら私も……。

なんとなく小説っぽく書いてみました。ようするにIt is a dog.とAからの宗教勧誘、この二つが私が哲学科に入る大きなきっかけだと思われます。あとは高2の時の倫理の授業も影響としては大きいのですが、あくまでダメ押しできっかけではなかったと思う。
毎度毎度長い文章を読んでくれてありがとう。
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